ニューヨーク・ヤンキースのキャンプ地タンパは、フロリダ半島西海岸最大の都市である。近隣にはクリアウォーターやダニーディン、セント・ピータースバーグなど、他球団のキャンプ地も多く、毎年、春になるとその人口に匹敵するほどの野球ファンがやって来ることで知られている。
2月20日、この日も数百人の人々がレジェンズ・フィールドに集まっていた。“伝説の球場”とは、なるほど洒落たネーミングだ。ベーブ・ルース、ルー・ゲーリック、ジョー・ディマジオ、ミッキー・マントル等々。メジャーリーグのことをよく知らなくても聞いたことのある名選手たちの写真が場内に飾られている。現役の“伝説候補”たちは、天国に召された大先輩が築き上げたおとぎ話の末端を担っていた。彼らはタンパでのトレーニングキャンプを経て、メジャーリーグという戦場に駆り出されるのである。
“One! One! One!”
サブグランドに、ホルヘイ・ポサダの声が響き渡った。
マウンド上で投げる格好だけしたケイ・イガワ―井川慶は、ノッカーが手で転がしたボールに素早く駆け寄り、それを拾い上げるとクルリと回転して一塁へ送球した。濃紺の上着の胸には真っ白なNYマークが光っていた。
彼の周りには4人のヤンキースがいた。今季のStarter(先発投手)―マイク・ムシーナ、アンディ・ペティット、カール・パバーノ、そして、王建民である。過去数年間故障に苦しんできたパバーノはともかく、ムシーナとペティット合わせてメジャー通算425勝、王は昨季のサイヤング賞(最優秀投手賞)で次点となった実力者だ。
![]()
![]()